療育における認知行動療法とは?期待できる効果や方法について紹介

コラム

2023/12/19

 

療育の分野で注目を集めている認知行動療法(CBT)は、子どもたちの心理的な課題や行動の問題に対処するための有効なアプローチです。この療法は、否定的な思考パターンや行動を理解し、それらをより建設的でポジティブなものに変えることを目指しています。本記事では、認知行動療法の基本原理、その実施方法、そして子どもたちの発達におけるその影響について詳しく解説します。

 

もくじ

認知行動療法とは

認知行動療法に期待できる効果

認知行動療法を行う際の流れ

まとめ


認知行動療法とは

CBTとも呼ばれCognitive Behavioral Therapyの略称となっています。物事の捉え方(認知)と行動に働きかけてストレスの軽減を目指す心理療法で、元々「認知療法」と「行動療法」が別々に存在していましたが、近年では関連性が深いとされ、合わせて呼ばれることが多いです。まずは別々に見ていきましょう。

 

1、認知療法

物事の捉え方のことを「認知」と言います。これは同じ出来事でも人によって変わってきますので、認知に偏りがあると、普通なら何でもないことでも大きなストレスを受けることとなってしまいます。

 

例えば朝、起床時間に起きれず寝坊してしまったとき、出かける時間まで10分あるという現実は変わりませんが、「10分しかない」と受け止める人と「10分もある」と受け止める人がいます。「10分しかない」と思って焦って支度をしてしまうと、「忘れ物をしてしまう」など、その後の行動にも影響が出てきてしまいます。このような偏った認知を整えて、柔軟な考え方ができるようにしていきます。

 

うつ病などの精神疾患を抱えている人は、物事を悲観的、否定的に捉える傾向にあります。こういった認知の偏りをカウンセラーとの面談や後述する「コラム法」などを用いて、現実に沿ったものに変えていきます。

 

2、行動療法

普段の自分がしている行動の問題点に着目し、適切な行動を考えて実行することで問題を解消していく療法です。

 

例えばパニック障がいを持っている人が、パニックになる不安から電車に乗れないことを克服したい場合、「曝露療法」を用いて、あえて苦手な環境の中に身を置くことをします。まずは電車に乗らずに、カウンセラーとともに「駅の前に行く」ところからスタートし、「駅前から電車を眺める」、「駅舎に入ってみる」、「改札を通ってみる」、「ホームまで行ってみる」、「各駅停車に一駅だけ乗車してみる」など、段階を踏んで慣らしていき、最終的に「電車に安心して乗れる」ことを目指します。

 

3、自動思考

これは何かの出来事に対して、自動的に浮かぶ考えのことで、人によって違います。

 

例えば、良く知っている人に朝の挨拶をしたとします。そのときに相手から挨拶が返って来なかったとしたら、どんな思考が自動的に浮かぶでしょうか?

 

「嫌われている」、「怒っている」、「自分の声が小さくて聞こえなかった」、「相手が考え事をしていた」、「相手が挨拶に関心がない」など人によって様々な考えがあると思います。

 

これに良し悪しがある訳ではありませんが、現実とのズレが大きかった場合、様々な問題となってしまいます。特に現実にそんなことはないのに、悲観的、否定的な思考をしてしまうと大きなストレスとなり、その後の行動にも悪影響が出てきます。この自動思考と現実のズレを整えていくことが重要です。

 

4、療育においての活用

療育の現場では、特に自閉症スペクトラムに効果があるとされていて、曝露療法が用いられることが多いです。恐怖や不安を感じるものに段階的に自分を晒して、徐々に克服していきます。

 

例えば、特定の音に対して過敏に反応してしまう子供に対して、その音をごく微小な音量で聴かせ、段階的に音量を上げていったり、様々な環境下で聞かせる事で慣らしていく、というのもこの療法のひとつです。

 

 

認知行動療法に期待できる効果

期待できる効果としては認知の偏りを整えていくことで、それまで感じていた負の感情やストレスを軽減する効果があり、社会不安症、うつ病、パニック症、脅迫症などの精神障がいや不安障がいに有効とされています。これらは様々な研究によって科学的に効果が認められています。

 

またこれらは専門家がおこなうものから学び、対象者が日常生活に取り入れて継続しやすいので、自己の管理や症状の再発防止にも役立ちます。

 

療育の観点では、例えば、自閉症スペクトラムの子供の場合、「自信や勇気が持てる」、「色々なことに挑戦できるようになる」、「自己肯定感が持てる」、「些細なことに左右されなくなる」などの効果が報告されています。

 

 

認知行動療法を行う際の流れ

実際におこなう際の流れについて、「コラム法」を例に解説していきます。

 

この方法では、起こった出来事を5つの項目にわけて表に記載することで、客観的に分析します。これにより自分の認知のクセに気づき、現実とのバランスを整えることが目指せます。5つの項目は次の通りです。

 

1、出来事

起こった出来事を、出来るだけ事実のみ書くようにします。

2、自動思考

起こった出来事に対しての自分の自動思考を書きます。感じたままに書きましょう。

3、感情の数値化

その時の感情を、悲しみ、不安、焦り、怒り、憎しみ、羞恥、イライラなどに仕分けして、100点満点で何点か、数値化します。

4、適応的思考

自動思考以外に考えられるものを探し、書き出します。

5、感情の再数値化

適応的思考を考えた後に、その可能性を踏まえて再度感情の数値化をおこないます。

 

例えば前述の自動思考の項目で挙げた例のように、挨拶が返ってこなかった際の自動思考では「嫌われている」と考えて、感情が「悲しみ」90点、「不安」80点だったとします。その後、適応的思考で「自分の声が小さくて聞こえなかった」、「相手が考え事をしていた」などの可能性を挙げ、今回の出来事だけで「嫌われている」と判断できないと考えることができれば、その時感じた負の感情は軽減され、「悲しみ」20点、「不安」10点にまで下げる事ができます。

 

このように様々な可能性を考えて感情を落ち着かせ、実際に数字を書くことで、視覚的に気持ちが楽になったと実感することができます。最初は各項目の整理に時間がかかりますが、慣れてきたら表を作成しなくても、頭の中で同様の処理ができるようになります。

 

他にもいくつか手法があるので、代表的な物を紹介させていただきます。

 

○曝露療法

前述しましたが、不安を感じることに対して自分自身を晒し、段階的に慣れていくことを目指す行動療法です。エクスポージャー法とも言います。

○セルフモニタリング法

手帳やワークシートに自分自身のことを記録していく行動療法です。一定期間(一週間、一か月など)、同じ時間や同じ行動の後などに、気分や体調を数値化して記録し、客観視することで、自分の気分や体調の変化の傾向がわかり、自己理解につながります。

○ロールプレイ

ロールプレイングゲームの語源にもなっています。当事者が自分ではなく、他人だったらどうするか、他人になったつもりで想像力を膨らませ、考えを述べていきます。それにより、新たな価値観の発見や、物事の多面的な見方を養います。

○支持的精神療法

「話を聞く」、「共感する」、「受け入れる」を主とした療法で、現在の状況、不安や悩みなどを言語化して聞いてもらうだけで不安の解消に繋がり、冷静な判断ができるようになるという療法です。

 

このほかにも様々な療法があるので、対象者の状況や症状に合わせて使い分けることが重要となってきます。

 

 

 

まとめ

いかがだったでしょうか。詳しく知ることで、発達障がいにも利用することができ、療育に取り入れることが可能であるとおわかりいただけたと思います。

 

実施はとても簡単ですし、場合によってはオリジナルのものを作成することも可能ですが、実施の際は対象者一人一人に合わせた判断が必要になってきますし、症状は少しずつ改善に向かいますので、じっくり時間をかけて向き合う事が必要です。しっかり理解して、是非活用してみてください。


療育キャリアではひとりひとりの希望に合った福祉関係の仕事を紹介しています。

登録は無料で簡単に行えますので、是非お気軽にご相談ください。

 

この記事の関連記事

自閉症支援のツール徹底ガイド!療育現場で役立つ実践的なツール選びとは?

この記事では、自閉症支援ツールの選び方と具体的な活用方法を解…

この記事では、自閉症支援ツールの選び方と具体的な活用方法を解…

療育の現場における衛生対策の基本や感染症予防の方法について解説

  「福祉の仕事をしたいけど、療育現場の衛生管理ってどんな…

  「福祉の仕事をしたいけど、療育現場の衛生管理ってどんな…

療育におけるマカトンサイン(療法)とは?期待できる効果や実施方法について紹介

  福祉の仕事について調べていると、たまに目にする「マカト…

  福祉の仕事について調べていると、たまに目にする「マカト…

ムーブメント教育・療法とは?期待できる効果や実施方法について紹介

  福祉の仕事について調べていると、時折目にする「ムーブメ…

  福祉の仕事について調べていると、時折目にする「ムーブメ…

療育におけるインリアルアプローチとは?期待できる効果や実施方法について紹介

  福祉の仕事について調べていると、目にすることがある「イ…

  福祉の仕事について調べていると、目にすることがある「イ…

療育におけるソーシャルストーリーとは?期待できる効果や実施方法について紹介

  福祉の仕事について調べていると、時折目にする「ソーシャ…

  福祉の仕事について調べていると、時折目にする「ソーシャ…

療育におけるポーテージプログラムとは?期待できる効果や実施方法について紹介

  皆さん「ポーテージプログラム」という言葉をご存じですか…

  皆さん「ポーテージプログラム」という言葉をご存じですか…

療育における絵カード交換式コミュニケーションシステム(PECS)とは?期待できる効果や実施方法について紹介

  福祉の仕事を調べていると目にすることがある、絵カード交…

  福祉の仕事を調べていると目にすることがある、絵カード交…

新着記事

自閉症支援のツール徹底ガイド!療育現場で役立つ実践的なツール選びとは?

この記事では、自閉症支援ツールの選び方と具体的な活用方法を解…

療育の現場における衛生対策の基本や感染症予防の方法について解説

  「福祉の仕事をしたいけど、療育現場の衛生管理ってどんな…

療育におけるマカトンサイン(療法)とは?期待できる効果や実施方法について紹介

  福祉の仕事について調べていると、たまに目にする「マカト…

ムーブメント教育・療法とは?期待できる効果や実施方法について紹介

  福祉の仕事について調べていると、時折目にする「ムーブメ…

療育におけるインリアルアプローチとは?期待できる効果や実施方法について紹介

  福祉の仕事について調べていると、目にすることがある「イ…

療育におけるソーシャルストーリーとは?期待できる効果や実施方法について紹介

  福祉の仕事について調べていると、時折目にする「ソーシャ…

療育におけるポーテージプログラムとは?期待できる効果や実施方法について紹介

  皆さん「ポーテージプログラム」という言葉をご存じですか…

療育における絵カード交換式コミュニケーションシステム(PECS)とは?期待できる効果や実施方法について紹介

  福祉の仕事を調べていると目にすることがある、絵カード交…

療育における食事療法とは?期待できる効果や実施方法、注意点について紹介

  福祉の仕事について調べていると、療育分野において時折目…

療育における薬物療法とは?期待できる効果や実施方法、注意点について紹介

  福祉の仕事について調べていると、時折目にする「薬物療法…

人気記事ランキング