療育における食事療法とは?期待できる効果や実施方法、注意点について紹介

コラム

2023/12/19

 

福祉の仕事について調べていると、療育分野において時折目にする「食事療法」という言葉。詳しいことを知りたいという人の為に、この記事ではそもそも食事療法とはなにかからその効果と実施方法、注意点まで詳しく解説していきます。

 

もくじ

食事療法とは

食事療法の期待できる効果

食事療法の実施の仕方と注意点

まとめ



食事療法とは

食事療法とは英語ではmedical dietと表記し、食事の量やバランス、成分を調節することで、病気の療養をはかったり、問題のある臓器を守って健康管理をすることをいいます。糖尿病や腎臓病、高血圧の治療の際によく用いられます。

 

○療育における食事療法

療育先進国であるアメリカやヨーロッパなどでは、治療法として言語療法や行動療法、オステオパシー(整骨療法)、ホメオパシー(類似療法)などと共に「食事療法」がおこなわれています。

 

これは食事を「環境要因」の一つであると考え、脳に不足している栄養素を的確に補完して、脳内の神経細胞を活性化させ、神経伝達物質やホルモンバランスを整えながら整体機能を引き出すという療法です。

 

具体的にはPRA毛髪分析検査の結果に基づいて、その人に併せた食事の指導とサプリメントの処方により、必要な栄養素の接種をおこなっていきます。

 

このように食事療法には検査に基づいて栄養素の増減を確認し、医師がおこなう場合と、医師以外が試みて症状の改善を目指す場合と大きく分けて2つがあります。

 

 

 

食事療法の期待できる効果

発達障害の原因として「腸内環境の悪化」、「解毒機能の低下」、「機能性低血糖症に関わる症状」、「先天的、遺伝的要因」があるとされ、医師は「ペプチド検査」、「OTA有機酸検査」、「IgG遅延型アレルギー検査」、「有機検査」などの結果を受け、分子栄養医学に基づく療法や、オーソモレキュラー療法、デトックス+ビタミン療法、遺伝子栄養療法などの栄養療法をおこないます。

 

医師がおこなう、食事療法について、具体的な指導内容と、それに期待出来る効果を見ていきましょう。

 

1、脳内で不足しやすい栄養素の補完

脳は主にニューロンと呼ばれる神経細胞とグリア細胞の2つで構成されていて、90%がグリア細胞なのですが、情報処理を支える主役が、残り10%の神経細胞です。この細胞間では「神経伝達物質」によって情報が伝達されていて、その種類は60以上に及び、代表的な物はセロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリンなどで、「モノアミン系」と呼ばれるものです。

 

発達障害のある人は神経伝達物質セロトニンが不足しやすく、不安や心配の感情を招きやすいとされていて、ドーパミン受容体が多く存在する為に多動症状や衝動性が表れるとされています。

 

神経伝達物質や神経細胞の元となる栄養素、セロトニン、GABA、アセチルコリン、レシチン、DHA、ビタミンなどを補完することでリラックス効果、気持の抑制に繋がります。

 

2、腸内環境を整える

適した発酵食品を摂取することで、腸内環境が改善され、悪玉菌や真菌の増殖を防ぐことが出来ます。悪玉菌や真菌が多くなると腸壁に影響がでてしまい、腸壁を通って有害物質が血管から脳へと悪影響を及ぼしますので、腸内環境の改善が有効となってきます。

 

また、発達障害のある人は、グルテンとカゼインの影響を受ける体質の場合が多いので、不耐症の有無を調べ、必要であれば真菌の除去をおこないます。

 

3、血糖値を安定させる

血糖値の変動が大きいと、身体に負担がかかるだけでなく、ホルモンバランスが崩れ、精神面に影響を及ぼしたり神経伝達物質のバランスも乱れやすくなります。血糖値の上昇が緩やかになる食事に変更することで、それらを防ぎます。

 

このように、食事指導によって効果は期待できますが、それがストレスになってしまうと他の弊害となりますので、一人一人に合った方法でおこなうよう、注意が必要です。

 

医師以外がおこなう食事療法としては、日本で有効とされているものは、「グルテン、カゼイン除去食事療法」、「糖質制限(ローカーボ)食事療法」、「自然療法」、「マクロビオテック」などがあります。これを元に、有害な食べ物、身体が受け付けない食べ物を取り除き、サプリメントで身体を整え、足りない栄養素を補うという方法が取られます。

 

 

 

食事療法の実施の仕方と注意点

では実際に発達障害のある子供に食事療法をおこなう際の、実施方法と注意点を見ていきましょう。

 

自閉症児の偏食は一般的に認知されている「偏食」とは異なり、自閉症の特性である「音、匂い、味、質感、温度」に対する感覚の過敏さと、その他の五感の特異性が深く関わっています。例えばある市販食品のあるメーカーの物だけを好み、それ以外は受け付けないという事例もあり、一般の子供の一時的な偏食とは明らかに違うものになってきます。

 

一般的な子供の場合、1〜2歳ごろ、新しい食べ物を拒むことが多くなってきます。これは通常の成長過程でよく見られる現象で、機会を与え続けることで改善し、大人になると普通に食べれるようになります。それに対し、自閉症児の場合、食べる事の出来る食事の品目が10〜15種類以下ということもあり、それが改善していかない傾向にあります。更に、9種類以下の品目しか食べることが出来ないという例もあり、その場合、重度の偏食となり、栄養障害で合併症を起こしてしまうこともあります。

 

これに対しては、以下のことをおこないます。

○現状を受け入れる

○好きな物を好きなだけ食べさせる

○サプリメントでビタミン、ミネラルを補給する

○場合によっては経管栄養(チューブを通して直接消化管内に流動食を投与)を用いる

 

例えば白米しか食べない場合、白米を十分に食べさせることが重要です。「白米の量を減らしてお腹が空いたら他の物を食べてくれるのではないか」という考えは、一般の偏食の子供なら通用しますが、自閉症児にはこの考え方は通用しませんので、注意が必要です。

 

療育施設などで偏食の支援をおこなう場合は次のようにおこなうと効果的です。

 

1、食事の観察と記録

子供が実際に食べている食事を数日に渡り観察、記録をおこないます。どのような食材、メニューを好むか、食事の場面での困りごとなども一緒に記録し、何を基準に食べ物を選んでいるのかをつかみます。

 

2、身体と栄養状況の把握

身長、体重、年齢、食事量などから栄養必要量を算出し、成長曲線をつけることで食べている量が適正か確認します。

 

3、好みの感覚、偏食傾向のリストを作成

口内の過敏性が強いのか、ねっとりした食感が苦手なのか、見た目に反応しやすいのか、匂いに敏感なのか等、確認し、リストを作成します。これを元にひとりひとりに合った支援をおこない、改善をめざします。

 

 

 

まとめ

療育における食事療法は、医師が検査に基づき行うものと、家庭や療育施設で取り入れていけるものと2パターンあることがおわかり頂けたと思います。どちらの場合もひとりひとりに合った方法で適切な支援をおこなうことで、少しずつですが改善を目指せます。子供にしっかり向き合って見守り続けることが重要です。

 

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