療育におけるソーシャルスキルトレーニング(SST)とは?期待できる効果や方法について紹介

コラム

2023/12/19

 

福祉の仕事について調べていて、社会生活でのコミュニケーション支援の方法として、よく登場する「ソーシャルスキルトレーニング(SST)」という言葉。どんなことを実施するのか詳しく知りたい、という方の為に、この記事ではソーシャルスキルトレーニングとは、という所から、それによって期待できる効果、実際の実施方法、療育における実施方法まで詳しく解説していきます。

 

もくじ

ソーシャルスキルトレーニング(SST)とは

ソーシャルスキルトレーニング(SST)に期待できる効果

ソーシャルスキルトレーニング(SST)を行う際の流れ

まとめ



ソーシャルスキルトレーニング(SST)とは

ソーシャルスキルトレーニングとはSocial Skills Trainingと表記し、「社会生活技能訓練」、「生活技能訓練」、「社会的スキル訓練」などとも呼ばれます。これは、日常生活を送る上で欠かせない「ソーシャルスキル」全般を身に着ける為におこなうトレーニングで、発達障がいや精神疾患をもつ人が、思うように周囲とのコミュニケーションが取れず、「学校や職場に馴染めない」、「生活しづらい」と感じる場合に、「良好な人間関係を築く」、「周囲と調和して生活する」為におこなう訓練です。

 

具体的には、「あいさつをする」、「会話の際の相槌や目線を合わせること」、「会話中の表情、仕草から相手の気持を察する」、「自分の感情のコントロール」などのスキル習得を通し、人の考え方、受け取り方、行動に働きかけ、精神の負担を減らしていきます。これには認知行動療法に基づくリハビリテーション技法が取り入れられています。

 

1、対象者

もともとは統合失調症などの精神障がいを持つ人が社会復帰する為の社会生活技能訓練の一つでしたが、近年では様々な人に向けて実施されていて、以下のような人が対象となってきます。

○発達障がいや統合失調症、自閉症などの精神障がいがある

○情緒不安定だったり、自分の行動をコントロールするのが難しい

○指示、会話の内容の理解が難しい

○学習障がいがある

○得意不得意の差が大きい

○仕事を休職して職場復帰を控えている

 

2、実施場所

病院やクリニックの精神科、デイケアなどの福祉施設、就労移行支援施設などが主ですが、場合によっては学校や企業内で実施することもあります。詳しく知りたい場合は自治体の福祉課や障がい福祉課、就労、生活支援センターに問い合わせてください。

 

3、実施者

医師、看護師、作業療法士、臨床心理士、精神保健福祉士の他、指定の教育機関で訓練を受けた専門家がトレーナーになることができます。

 

4、方法

○認知再構成法

対象者と会話をし、認知の歪み(飛躍しすぎた判断やマイナスの固定観念)を明確にしたうえで、話題を掘り下げることで本人に自覚させます。これを元に行動計画を立て、行動変容を目指します。

○エクスポージャー法(曝露療法)

対象者の恐怖、不安を感じるものに危険を伴わない状況であえて触れて、段階的に慣れていくことで不安の解消を目指します。

○ABC理論

Activating events(出来事)、Belief(捉え方、思考、信念)、Consequences(結果、感情、行動)の頭文字を取った理論で、アルバート・エリスにより提唱されました。人間はA→B→Cの順番で物事を解釈するという論理療法で、出来事の捉え方次第で感情が変わるという理論です。これを元に物事の捉え方の変容を目指します。

 

 

 

ソーシャルスキルトレーニング(SST)に期待できる効果

ソーシャルスキルトレーニングは効果が実証された体系的な方法です。実践することで以下の効果が期待できます。

 

1、人間関係で適切なコミュニケーションが取れるようになる

相手や状況に合わせた言葉選び、適切な相手への相談、環境や相手との距離に応じ適した声量での会話などが習得できるので、トラブルの元になる言動がなくなり、自分の気持を上手く伝えることが可能になります。結果、人間関係が円滑になり、ストレスや不安の軽減

に繋がります。

 

2、自分の感情をコントロールできるようになる

感情をコントロールする「意義」を学ぶことで、人間関係に置ける感情コントロールの重要性を理解します。「自分の感情を表に出す前にワンクッションをおく」や「相手の事情を聞く」、「自分の気持を伝える」など、段階的に習得していきます。

 

3、相手の気持ちを考えた行動が取れるようになる

自分の行動が相手にどのような影響を与えるのかを考え、相手の気持ちを読み取る力を身につけます。相手の気持ちを理解すれば、コミュニケーションの円滑化に繋がり、その場に適した行動を取ることができます。

 

 

 

ソーシャルスキルトレーニング(SST)を行う際の流れ

実際にトレーニングをおこなう際は様々な形式に乗っ取って進められます。それぞれの形式を見ていきましょう。

 

1、ゲーム、レクリエーション

これらは明確なルール下でおこなわれることと、相手とのコミュニケーションが多く発生することからも、トレーニングとしては最適です。実施する内容、種類などは対象者の年齢や状態によって変化しますが、ボードゲーム、カードゲーム、かくれんぼ、テレビゲーム、コンセンサスゲームなどが広く取り入れられます。

 

2、ディスカッション

コミュニケーション能力向上に適しています。相手の意見をしっかり聞き、そのうえで自分の意見を述べることは相手の気持ちを考えることにも繋がり、言葉のキャッチボールが円滑におこなえるようになります。参加者によってルールやテーマを変更し、時には参加者に決定させ、効果的に進むようにすると良いでしょう。

 

3、ロールプレイ

ロールプレイングゲームの語源ですが、「役割を演じる」ことを通し、様々な場面を想定して、その場面に適した行動をとるという疑似体験により、実生活に役立てていくという形式です。上手く演じることよりも、その場で求められる行動を自分なりに考えて、動く事が重要です。

 

4、共同活動、共同行動

何かの作品を作ったり、料理をするなどの共同作業をグループでおこない、協力して行動することで相談や助け合い、役割分担などの経験を得ます。実際に体験しながらトレーニングするので、実践的なソーシャルスキルが身に付きます。内容は対象者の年齢や状況によって適切なものを選ぶと効果が大きいでしょう。

 

5、ソーシャルストーリー

絵と短い文章で社会のルールやコミュニケーションの方法などをまとめた「ソーシャルストーリー」を使い、行動ではなく、文章と言葉を軸にトレーニングをおこないます。様々な書籍が発行されているので、それを使う場合と、オリジナルで対象者に合わせて作成する場合もあります。

 

これらの形式を元に「日常生活」、「学校生活」、「仕事の場面」など対象に合わせた場面を想定してトレーニングをおこないます。療育的な観点では「日常生活」と学年も考慮した「学校生活」を想定する必要があります。

 

 

まとめ

ソーシャルスキルトレーニングは、ソーシャルスキルの習得に非常に効果的な方法だということがおわかりいただけたと思います。重要なのは対象者の現在のスキルの程度と特性を把握して、最適な内容を実施することです。つまり、療育的な観点で実施するのであれば、対象が子供であり、日常生活の想定、学校生活においては学年も考慮して想定すること、そして、実践と改善を繰り返すことで効果が最大限に発揮できますので、トレーナー側の状況判断も重要になってきます。責任とやりがいのある仕事ですので、是非チャレンジしてみてください。

 

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